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第5話 離陸前夜 STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days

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STAR DRIVER 輝きのタクト 二次創作

 以下の作品は、「STAR DRIVER 輝きのタクト」の二次創作作品です。公式作品とは一切関係ございませんので、その点をご承知置きの上、お読みいただければ幸いです。

STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days 第5話 離陸前夜



-1-


 ツナシ・タクトの部屋には一枚の絵が飾られている。20号ほどのキャンバスに、水辺を背景として、一人の女性の後姿が描かれた絵だ。右下隅には「R」というサインが入れられている。タクトの父が描いたという絵だ。
 描かれた女性の顔は見えない。しかし、淡いタッチの作品、パステルカラーのワンピースとつばの広い帽子、全体に漂う静かな雰囲気から、振り返ればきっと美しいかんばせとやさしさを見せてくれる女性に違いない。見る者にそう感じさせる絵だった。きっと、描いた人間がモデルの女性にそんな印象を抱いていたのだと思う。だが、残念ながらタクトにその女性の記憶はない。

 タクトは祖父のツナシ・イクロウと共に暮らしている。
 タクトは祖父のことをとても尊敬している。イクロウは身の丈こそ昔の日本人らしく小さいが、心はとてつもなくでっかい。頭も切れるし、腕っ節も強い。そして何より勝負度胸がある。
 タクトがまだ小さい頃、夏祭りの夜店に現れ屋台に因縁をつけ出したチンピラ5人組を一瞬にしてのし、その親である組にまで話をつけに行って無事に帰ってきたのは、いまだに近所の語り草になっている。
 だからタクトは、そんな祖父にあこがれていたし、彼の言葉を疑ったことは一度もなかった。

 そんな祖父のイクロウがタクトに課している日課がある。それは早朝のロードワークと、帰宅後の立会い稽古だ。
 ロードワークは、タクトが中学校に入学してからは、ノルマが毎朝10キロメートルに増えた。朝から追い込みすぎて学校で勉強できなくなっても困るのでかなり流し目に走るのだが、それでも35分は切る。立会い稽古についても、イクロウを相手に防具あり、武器ありのフルコンタクトの稽古を行うので、どんな運動をしても同年代に後れを取ることなどまずないといってよい。
 しかし、祖父から不要な冒険を避けるように、と申し渡されているので、中学校では極力目立たないよう、実力を上手く隠してひっそりと過ごしてきた。

 中学校では目立つ人間がよくもてる。特に運動で活躍できれば最高だ。
 顔立ちは美麗といってよいタクトなので、初めの頃は女子にもてはやされていたのだが、体育の授業や運動会などで適度に失敗を織り交ぜながら目立たなくしてきた今では、そんなに悪くもないけれど特に格好よくもない、という女子の評価に落ち着いていた。
 だから誰もタクトに興味を持たない。朝もギリギリに来て夕もすぐに帰るという生活パターンが出来上がっているので、今ではめったに声もかけられない。タクトにとって学校生活は、どこか本物ではない、という場所に過ぎなかった。

*****


 タクトは中学三年生になり、クラス替えで新しいメンバーと顔をあわせることとなった。そうはいってもそれほど大きくもない学校なので、全く知らないという顔はない。だから、これまでと同じ、ただ過ぎ去るのを待つという学校生活があるだけのはずだった。
 だがそれは、ひとつの出会いによって一変してしまう。

 担任から呼び出され仕事の手伝いをさせられタクトは、その日、いつもより下校が遅くなってしまった。荷物を取りに行くため、自分のクラスの教室へ向かう。夕暮れの廊下では、ほとんど人とすれ違うことはない。
 学校にはまだ多くの生徒が残っているのだが、運動部の活動は体育館や校庭で行われているし、文化部の活動場所は特別教室がメインだ。一般教室棟には誰も残っていない。タクトはそう思っていた。
 しかし、タクトが教室に近づくにつれ、その中から人の話し声が聞こえることに気づいた。別に自分の教室に行くだけなので何ら後ろめたいことはないのだが、その話し声が辺りを憚るように潜めた調子で聞こえていたため、タクトはつい足音をひそめ、こっそりと扉の隙間から中をのぞいてみることにした。

 窓から差し込む赤い日の光。それが教室に並べられた机や椅子の長い影をうつし出している。その中央には、二人の人影があった。席についている少年がコモリ・ナツオ、その前にいて、机に広げた何かを一緒に見ている少女がオカダ・ハナだ。
 タクトはそれを見て、特にアブないことが行われているわけではないことに安心をした。これならば特に問題はないはずだ。少し廊下を戻り、今度はわざとらしく足音を立てて教室へ近づいていく。そして、一呼吸置くと、教室の扉を開けた。

 ガラリ。

 教室の中にいる二人が一斉にタクトを見やる。タクトはその視線を受け、特になんでもないように教室に入っていくと、窓際後ろの方の自分の席に向かった。
「やあ、やっと終わった。早く帰ろうっと」
 そんなわざとらしいセリフも挟む。

 ナツオは入ってきたタクトを一瞥すると、ハナに何やらささやいた。するとハナがうなずき、タクトの方に向かってくる。一方、ナツオは廊下側の扉に向かうと、その鍵をかけた。そしてタクトを見ると、にっこりと笑いかけて言った。
「イッツア、チャーンス!」
 タクトにはまったくその意味が分からない。
「チャンス?何が?むしろ僕にとってはピンチなんじゃない?こんな閉じ込められるような悪いこと、何かした?僕は何も見てなんかいないよ?」

 突然の事態に混乱し、タクトは言う必要もないことまで言ってしまう。すると、ナツオはタクトの方に手をわきわきさせながらにじり寄ると、なにやら悪だくみを思いついたいたずらっ子の様なをして言った。
「み~た~な~。逃がさないぞ~」
「見たからには責任を取ってもらわないとね、男なら」
 一緒にいるハナもナツオのノリに合わせて、タクトの左腕を掴んでくる。
 イクロウから指南を受けているタクトにとっては、同年代の中学生、しかも一人は女子を振り払うことなど造作もないことだ。だが、ここで無用な騒ぎを起こすことはできないし、決定的な場面に至るまでは流れに任せたほうが良いかもしれない。
「イッツア、ピーンチってやつ?」
 タクトはそう言うと、おとなしく二人に従うことにした。



 その日、帰宅したタクトは、晩ご飯前の稽古を終えたあとで祖父に告げた。
「じいちゃん、これからしばらくの間、帰りが遅くなるかも知れない」
 イクロウはそう言った孫を見つめ、ひとつの質問をした。
「それはお前の人生にとって、輝きの欠片となるものか?」
 その不思議な問いかけに対し、タクトは真摯に答える。
「まだわからない。でも何か気になるんだ」
「そうか。では好きにしろ。ただし、無理だけはするな」
 そう言うイクロウは、どこか嬉しそうだった。



-2-


 タクトがナツオやハナと初めてまともに話をしたあの放課後、二人が見ていたのは一枚の設計図だった。
「これは何の設計図なのかな?」
 飛行機の設計図であることは分かるのだが、それが目の前の中学生とどの様につながるのかが分からない。
「これは人力飛行機の設計図だよ」
 ナツオがタクトの質問に答える。
「人力飛行機?というと、テレビでやっている、琵琶湖とかを飛ぶやつのこと?これ、ちゃんと飛ぶの?」
「もちろん飛ぶ…はずだ。まだ誰もこの設計図で、実機を作って飛ばした人間はいないんだ」
「へえ。この設計図って、どうやって手に入れたの?まさか、コモリくんが描いたわけじゃないよね?」
 タクトのその質問に対し、ハナが答える。
「わたしが従兄からもらったの。元々は大学のサークルで実機を作る予定だったんだけれど、何かトラブルがあって解散しちゃったんだって。だからもう、誰もこの飛行機を作ろうとする人はいないんだよ。でも、それをナツオくんに見せたらすごく興味を持っちゃって」
「で、僕たちでこれを実際に作って飛ばそうっていうわけ」
 そう言うナツオは自信満々にみえる。
「僕たちって、君たち二人で?ちゃんとできるの?」
「大丈夫だよ、僕たち三人ならできるさ」
「三人?あと一人は誰なの?」
「もちろん、ツナシくん、君だよ。こうして秘密を知ったんだし、手伝ってくれるよね?」
 ナツオはそういうと、タクトににっこりと笑いかけた。

*****


「今日はツナシくんに僕たちの作業場所を紹介するよ」
 そういうナツオに連れて来られたのは、街はずれにある古い工場だった。しかし、古いとはいえ設備はしっかり残されているし、電気も通っているようだ。
「こんな場所、勝手に使ってもいいの?怒られるんじゃない?」
 タクトは心配してそう問いかける。
「大丈夫。私の家は不動産を扱っているんだけれど、この工場は不景気で倒産した町工場が銀行に担保として差し出していたものなの。で、それをうちが管理しているっていうわけ。親には話を通してあるから、爆発してふっ飛ばしたりしない限り、怒られることはないわ」
 ハナがそういってタクトを安心させた。

「へえ。色々と準備万端なんだね。でも、ちょっと調べたんだけれど、人力飛行機を作るには何百万円もお金がかかるんでしょ?そんなお金はどこにあるの?もしかして、コモリくんの家ってお金持ち?」
「いや、別にうちはお金持ちじゃないよ。ちょっとした理由で出資してもらえてね。だから、この飛行機を完成させる分くらいのお金は、心配する必要がないよ」
 そういうと、ナツオはいつもとは少し違う、影のある表情で微笑んだ。しかしタクトはそれには気づかない。
「そうなんだ。ちなみにその理由って何なのかな?」
 タクトはそう問いかける。
「それはまだ秘密だよ。いずれ、ツナシくんにも分かるさ、いずれね…」
「それって、何かずるくない?僕を無理矢理仲間に引きずり込んでおいて秘密だなんて」
 そう言ってタクトは少しごねてみた。別に本当に無理にでも理由を知りたいわけでもないのだが、何となく意地の様なものだ。
「真実を知るには時間が必要なこともあるんだよ。いつでも答えが用意されているのは学校の試験くらいさ。現実の問題に答えがあることなんてめったにないんだ。だからその答えを得るために、人は時間をかけて少しずつ問題に取り組んで、解きほぐしていかなければならないと思うんだよ」
 そう言ってナツオは微笑んだ。

*****


「今日は主翼のカーボンパイプを製作する」
 ナツオがそう宣言した。
「カーボンパイプって何?普通のアルミパイプとかじゃだめなの?ナツオくん」
 ハナがそう質問した。
「アルミパイプでも作れないことはないけれど、この飛行機の動力が人力である関係上、機体はなるべく軽くした方が良いんだ。それに、なるべく強度が高くしないと、主翼が飛んでいる最中に折れてしまう。この設計ではアスペクト比が高い、つまり、主翼が長い設計を採用しているからね。だから、CFRPでパイプを自作するんだ」
 ナツオがそう説明する。
「そうそう。ナツオにひとつ聞きたかったんだけれど、どうして主翼がこんなに長いの?長くするから翼が折れやすくなるんじゃないのかな?ライト兄弟の飛行機なんかだと、翼が上下に二枚あるよね?ああいう昔の形の方が折れずに飛びやすいんじゃないの?」
 タクトがそんな質問をした。ナツオはタクトが技術的な質問をしてくれたことが嬉しいようだ。
「タクトが勉強してきてくれてうれしいよ。確かに、複葉機の方が揚力を二枚の翼で受けることができるから翼は短くて済む。でも自作する場合、構造が複雑になるから複葉機は設計が難しいんだ。それに、誘導抗力の問題もある」
「誘導抗力?」
「そう。飛行機が揚力を受けて浮かび上がるのは知っているよね。揚力は、飛行機が前に進もうとするときに、翼に当たる空気の力の差で生じる。ひとつには、翼の上面と下面で長さに差をつけることによって生じる空気の速度差から生じる力、もうひとつは翼に迎え角をつけてあげることで下面に当たる空気の力で浮かび上がるんだ。ただ、人力飛行機は人力で進むから、どうしても推進力を大きくすることが難しい。だからなるべく機体の抵抗する力を小さくしてあげないといけない。その抵抗する力のひとつが誘導抗力なんだ」
「どうすればその誘導抗力を小さくできるの?」
 ハナが質問する。
「誘導抗力は、主翼の両端で発生するんだ。翼の中ほどでは揚力を生む空気の流れも、端に来れば持ちあげるべき翼がなくなってしまい、代わりに空気の渦を発生させる。その渦が生み出す力が、飛行機を飛ぶ力を妨げてしまうんだ。そしてこの力は翼の長さが短いほど悪影響を及ぼしやすい。だから人力飛行機には主翼が長い設計が多いのさ」
「なるほどね。そういうことだったのか。さすがにナツオは詳しいね」
 そうタクトが称賛する。
「いや、一生懸命勉強したのさ。どうしてもこの飛行機を飛ばしたいからね」
 そう言ってナツオは微笑んだ。
「さあ、カーボンパイプを作ろう。まずは、軸となるアルミパイプを用意して、その周りにカーボンのシートを巻くんだ。そして…」
 三人の地道な作業は続く。

*****


「そういえば、どうしてこの飛行機は前ペラなの?中ペラの方がプロペラが起こす空気の流れの影響を受けにくいでしょ?」
 タクトがそう尋ねる。

 前ペラというのは、飛行機の先端にプロペラをつける形式のことだ。牽引式ともいい、プロペラが起こす力で機体を引っ張る方式なのだが、そのプロペラが起こす風が操縦席に当たり、推進力を減衰してしまう。
 一方、中ペラというのは、操縦席の後ろにプロペラをつける方式のことで、プロペラが起こす力で機体を押し出す方式のことだ。この方が、プロペラの風が機体に当たらず有利だろうとタクトは言っている。

「確かにタクトの言うことにも一理ある。でも僕は、やっぱり飛行機はプロペラが前についているものだと思うんだ。そして、そういう飛行機で僕は空を飛びたいと思う」
「そういえば、いままで聞いたことがなかったけれど、どうしてナツオは空を飛びたいの?」
 タクトがそう尋ねる。
「…うん。難しい質問だね。…もしかすると、予行演習なのかもしれないね」
「予行演習?なんの?」
「いずれ空を飛ぶときのための、さ」
「なんなの、それ。ぜんぜん意味が分からないよ」
 そんなタクトの口ぶりを受けて、ナツオは笑っている。そして言った。
「やりたいこととやるべきことが一致するとき、世界の声が聞こえる。僕が聞いた世界の声は、この飛行機で空を飛べ、ということだったんだ。でももしタクトが聞く世界の声が別ならば…」
「別ならば?」
「そのときは、タクトがやりたいようにすればいいさ。もしタクトも飛びたいと思う時が来るなら、そのときは中ペラの飛行機を作ればいい」
「じゃあそのときはナツオも手伝ってくれるんだよね?」
 そんなタクトの問いかけに、ナツオはただいつもの笑顔を浮かべるだけだった。

*****


 タクトとハナが見守る中、ナツオが最後のボルトを締めあげる。
「よし、完成だ!」
「やったね、ナツオくん。おめでとう!」
「ようやく完成か。ナツオにはこき使われたな」
 ハナの称賛と、タクトの憎まれ口が次々と放たれる。ナツオも今日は満足そうだ。
「これでようやく僕も飛び立てる…。まあとにかく、今日はみんなで打ち上げだ!明日、プラットフォームに移動させて試験飛行を行うぞ!」
 そういうと、ナツオは家に向かって歩きだした。ハナもそのあとを追いかける。
 タクトは一歩を踏み出しかけると、やはり立ち止まり、振り向いて完成した飛行機を見回した。その堂々とした姿は、中学生が組み立てたものとは思えない。重力に逆らい飛び立つ、知恵と努力の結晶の姿だった。
「僕もいつか飛び立つ日が来るのかな?」
 そうつぶやくタクトは、そんな日が近々訪れる予感を感じていた。

<了>





第1話 そして物語は始まる

第2話 夢、絶望、それでも信じられるもの

第3話 目覚める刃

第4話 解けるしがらみ、絡むしがらみ

第6話 雪山のきずなにつづく>

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