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第4話 解けるしがらみ、絡むしがらみ STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days

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STAR DRIVER 輝きのタクト 二次創作

 以下の作品は、「STAR DRIVER 輝きのタクト」の二次創作作品です。公式作品とは一切関係ございませんので、その点をご承知置きの上、お読みいただければ幸いです。

STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days 第4話 解けるしがらみ、絡むしがらみ



-1-


 ニチ・ケイトとシンドウ・スガタ、アゲマキ・ワコの3人が中学校に入学してから、ケイトと他の二人は、これまでの関係に比べれば、ほんの少しだけ遠くなった。いつも一緒だった3人が、1人と2人に分かれたのだ。
 表面的な原因は、ケイトが部活動という、2人とは異なる活動の場を得たことに求めることができるだろう。科学部に入部したケイトは日々実験に没頭するようになり、スガタやワコと一緒に帰る機会もめっきりと減ってしまったのだ。
 しかし、この原因の元となった科学部への入部という行動をとらせた背景には、ワコを守るためならば何でもするという決意を見せたスガタを間近で見ていたくないという思いがあったのかもしれない。ケイトの心はケイト自身でも分析しきれないのだが…。


 南十字島の住民の多くは島外からやって来ている研究者や高校生以上の学生であるため、島内の小中学校に通う児童・生徒数はそれほど多くはない。研究者は若手や独身の者も多く子どもはほとんどいないし、昔から島に住んでいる家の子どもたちが大部分を占めている。
 加えて、自然が豊かな環境でもあるためか、子どもたちはどちらかというと運動系の部活動を好む傾向があり、総じて文化系の部活動は、開店休業状態という雰囲気があった。これは科学部でも例外ではなく、定例会の時期になれば参加してくる生徒も増えて来るが、それ以外の時期にはほとんど誰も、科学部の部室である理科室にやって来ることはない。たまに見回りに、顧問の理科教諭であるヤマナミ・ハジメがやってくる程度だ。

 しかし、ケイトにとっては先輩や同輩がいないというのは、むしろありがたかった。昔から、スガタやワコを除いて友だち付き合いをしていた人間はほとんどいないし、人との縁は薄い運命の下に生まれづいている。
 そんなケイトから見ると、理科室というのは実に居心地の良い場所だった。特に生活感を感じられないところがよい。

 教室という場所は、意外に生活感にあふれた場所だ。一日の約1/3を過ごす場所であるという事実を考えれば、それもむべなるかな。各人が許された範囲の中で、自分を表現しようと競い合っている気がする。それがケイトにはなじめない。
 ところが理科室は特別教室であり、理科の実験がない限りは、ほとんどの生徒は訪れない。そこに並べられているのは、ビーカー、フラスコ、メスシリンダーなどの実験器具や生物標本、試薬・劇薬などの各種薬品、天体望遠鏡や顕微鏡などの観測装置、岩石標本など、全く日常生活とはかけ離れたものばかりだ。それなのに、これらの非日常的な道具が日常生活の裏側に潜む法則を暴きだし、よりよい日常を作るのに貢献するのだ。ゆえに理科室は、ケイトにとって日常と非日常の懸け橋となる場所なのだ。

 そして科学がもたらす結果は、誰にとっても平等だ。これも素晴らしく良い。

 一般社会では、家柄や才能、お金のあるなし、親や家族・友人、そんな、自分ではコントロールできない要素が人間の価値を決めることが多い。人は生まれながらにしてみな平等などど言う輩もいるが、そういうことを平気で言える人間は、恵まれた立場の人間に決まっている。自分が底辺にいたことがないから、不平等を実感したことがないのだ。
 しかし科学には再現性というものがある。言いかえれば、再現性のない現象は科学ではない。人間がコントロールできる条件を整えてやりさえすれば、それを行うのがだれであろうと、導かれる結果は必ず同じになる。それが科学というものだ。

 自分は誰かに劣っているかもしれない。自分は誰かに好かれないかもしれない。そんなことを考えている人間が実験を行っても、その誰かが行っても、導かれる結果の間には僅かの違いもないのだ。なんてすばらしい世界なのだろう。ケイトはそう思っていた。
 しかし、後にケイトは、このときの自分が重大な要素を見落としていたことに気づかされることになる。

*****


 実験に没頭し、古今東西の様々な研究実績を追実験していく日々は、ケイトの中に徐々に独創性の種をはぐくんでいった。
 新しいものは模倣より生まれるなどという格言めいたものもあるが、これは一面の真実をついている。過去の洗練されたやり方を学ぶことにより、自分の思考レベルが引き上げられ、それが新たな着想を得る土壌となるのだ。

 そのひとつの結実としてまとめられた研究レポート「ポリアセチレン誘導体の新たな可能性について」は、顧問であるヤマナミ・ハジメからも高い評価を得ることができ、文部科学省が主催する全国理科展の選考に出展されることになった。

 それから3か月ほどの月日が過ぎ、また新たな課題に取り組み始めていたケイトは、理科室内のスピーカーから自分を呼び出す放送がかけられていることに気づいた。色々記憶を探って見るが、特に呼び出されるような理由は思い当たらない。とにかく、ケイトは向ってみることにした。
 呼び出された先である職員室脇の応接室にケイトが向かうと、そこには呼び出した顧問のヤマナミ・ハジメの他に、校長も彼女を待っていた。二人とも表情は穏やかで、生徒をわざわざ放送で呼び出したような雰囲気には見えない。

「突然呼び出してすまなかったね。実は先日、君が全国理科展に出展した研究が、文部科学大臣賞に内定したとの連絡があった。この賞は、内閣総理大臣賞に次ぐ、非常に名誉ある賞だ。わが校の誉れだと校長先生もおっしゃっている」
「本当です。南十字島という離島の環境にありながら、生徒数も少ない中、しかも一年生がこれほど名誉ある賞を受賞するなど、これまで例のないほどの素晴らしい功績です」
 ヤマナミ・ハジメと校長は、口々にケイトの受賞を褒めたたえる。

「ありがとうございます」
 ケイトは淡々とその称賛を受けているように見える口調だが、いつもよりわずかに高い声が、そのわきあがる喜びを表現している。

「一応この受賞はまだ内定ということになっているが、君の方で受賞に弊害がなければ、問題なく決定され公表される運びになっている。何か問題はあるかな?まあ、特にはないと思うが…」
 ヤマガミが一応といった形で確認して来る。
「いいえ、特に問題はありません」
 ケイトとしても特に問題はない。
「そうか、よかった。では残りの手続きは私の方で進めておく。もうひとつ、確認しておくことがあるのだが、もし君が希望すれば、授賞式当日は公休扱いとして参加することも可能だ。旅費についても、往復の交通費と宿泊費は学校から支給される。その場合、私が引率することになるが、どうするかね?」

 ケイトはこれまで島の外に出たことがない。小学校の修学旅行の行き先は東京だったのだが、島を出られないワコやスガタに付き合い、ケイトも修学旅行を欠席していた。今回、現地入りすることになれば、初の島外旅行ということになる。
「ご迷惑でなければ、出席したいです」
「そうか。では、この承諾書に保護者の方のサインをしてもらってきてくれ。それで万事問題ない。あとは私に任せておけばよい」
「わかりました。よろしくお願いします」
 そういって、ケイトは承諾書をヤマガミから受け取った。

*****


 翌週の全校集会で、ケイトの受賞が校長から発表された。当然、その話はスガタとワコの耳にも入った。
「ケイト、おめでとう。もっと前に言ってくれればお祝いの準備をしたのに。水くさいなあ」
「まあ今からでも遅くはないさ。ジャガーたちに言って祝賀会の準備をしてもらおう。もちろん参加してくれるだろう?」
 最近は昔ほど頻繁に言葉を交わすことはないが、やはり二人はケイトのことを気にかけてくれている。そのことは素直に嬉しい。そして、スガタが自分のためにわざわざパーティを開いてくれるということも…何か特別な感じがする。
「ありがとう、スガタくん、ワコ。私は普通に活動をしていただけだから、特に伝えるほどのことでもないかと思っていた。でも、やっぱり二人に祝ってもらえるのは嬉しい。ありがとう」

 その日は盛大なパーティが執り行なわれた。このときのことを、ケイトは一生忘れないと思う。

*****


 東京への出発の日。朝から絶好の旅日和だ。今日は通常の授業をこなしたあと、夕方のフェリーで出発する予定となっている。顧問のヤマナミ・ハジメとの合流場所は、南十字フェリー乗り場の前だ。
 いつもはバスで通過するだけの、南十字フェリー乗り場。本日最終のフェリーということで、明日の朝までには目的地に着いていたい人々が、パラパラと集まってきている。それでも満席になるには程遠い。きっと快適な旅になることだろう。

 出航20分前に、顧問のヤマガミがやって来た。いつもはあまり着ないスーツを着て、正装という雰囲気を醸し出している。
「待たせて悪かった。出掛けに色々と片付けなければならないことがあってね。もう余り時間がない。とりあえず乗り込んでしまおう」
 そういうとヤマガミは、ケイトにチケットを渡し、フェリーに乗り込んでいった。

 南十字フェリー株式会社が所有するフェリーは、船名をサザンクロスといい、全長180メートル、幅30メートルであり、平均速力25ノットで航海を行う。東京に行くもっとも早いルートは、本島までサザンクロスで渡り、そこから飛行機で向かうルートなのだが、今回は船中泊をして翌朝東京湾へと入る予定になっている。
 サザンクロスに乗り込んだケイトは、船室に荷物を置き、甲板へと出てきた。定刻通りにサザンクロスは出航する。行く海は静かで、安定した航海が見込まれる。
「適当なところで、船室に入りなさい。外は海風で冷えるから」
 ケイトにそう声をかけたヤマナミは、寒さに耐えかねたのか、早々に客室に引き上げていった。だが、ケイトはもう少し、海から島を眺めていたかった。そして、これからフェリーが向かう先も。
 霧笛の音が夕暮れの海に鳴り響く……。

<<<


 気付くとケイトは自室の布団の中にいた。フェリーで東京に行く夢を見ていたらしい。まるで遠足の前の小学生みたいだと、ケイトは自嘲気味に微笑んだ。
 朝の身支度を整え、学校へと向かう。絶好の旅日和だ。今日は通常の授業をこなしたあと、夕方のフェリーで出発する予定となっている。

 最近は寒さも感じられる季節になってきていたのだが、今日は珍しく暖かい。むしろ、暑いといってもいいかもしれない。

 授業が始まり、ケイトは周囲の様子がおかしいことに気づいた。3ヶ月も前に学んだはずの内容の復習を行っている。いや、復習というよりはむしろ、いま初めて勉強しているという感じだ。
 釈然としない思いを抱えながらも、ひとまず授業をやり過ごしたケイトは、理科室に備え付けられているパソコンで、ネットワークに接続をすることにした。一体いまがいつなのかを正確に確かめるためだ。
 日本には、独立行政法人情報通信研究機構という組織があり、日本標準時をネットワーク上で公開している。そのサイトにアクセスし、表示された日付は、ケイトが認識しているよりも3ヶ月前の日付だ。それにこの日は…。
 そう思うケイトの耳に、全校放送の音が飛び込んでくる。
「1-Aのニチ・ケイトさん、1-Aのニチ・ケイトさん、ヤマナミ先生がお呼びです。至急、2F応接室まで来てください」
 そう、この日は全国理科展の内定を告げられた日だ。



-2-


 そこからのケイトの日常は、強烈なデジャブにさいなまれる日々だった。

 顧問のヤマナミからの呼び出し理由は、やはり予想通り、全国理科展の内定を告げるものだった。内定を応諾し、すでに一度経験した日常をもう一度繰り返す。スガタやワコにも祝賀パーティをまた開いてもらった。だがこれらの繰り返しは、頭のおかしくなりそうな経験だった。

 しかしメリットがないわけでもない。このデジャブは知識や経験も伴っているため、普段の授業はすでに知っている内容ばかりだった。このため、勉強をする必要がない。浮いた時間は、いまケイト自身を襲っている現象について調べることに充てられた。
 中学校の図書館はもちろん、理由をつけて大学の図書館まで調べたが、ケイトと似た事例の報告は全く見つからなかった。ネット上の都市伝説にすら、そんな事例は見つからない。
 ただ新たな知識ばかり過ぎていく日々を経て、再び東京へと向かう日がやって来た。

 ケイトの記憶の中のみにある前回と同じ様に、ヤマナミとの集合場所は南十字フェリー乗り場だ。彼は出航20分前に駆け込んでくるはずだ。そして予想通りのことを言う。
「待たせて悪かった。出掛けに色々と片付けなければならないことがあってね。もう余り時間がない。とりあえず乗り込んでしまおう」
 そしてフェリーは出航した。また霧笛の音が聞こえる…。

<<<


 …半ば予想していたことではあったが、再びケイトは布団の中にいた。飛び起きると、ネットに接続し、現在の日付を確認する。…やはり3ヶ月前の日付だ。
 もはや間違いはない。ケイトは3ヶ月間の時間のループの中にいる。そしてそのきっかけは、全国理科展の受賞と、それに伴い発生する、ケイトの東京行きだ。つまりケイトは東京へいけない、いや、南十字島の外へは出られないのだ。

 この事実から推測するに、ケイトはワコと同じ、四方の巫女の一人なのだろう。そのどれに該当するかまでは分からないが、巫女だということは間違いない。
 そうと分かれば、もっとも手っ取り早い対処方法は、ワコに相談することだろう。彼女は祖母のアゲハから詳しい話を聞いたという。ケイトにとっても有益な情報を与えてくれる可能性は高い。それが理性的な判断というものだ。
 しかしなぜかケイトは、もっと感情的に判断したい気分になった。それはなぜだろう。自問してみる。

 やはりこの判断の中心にいるのは、ワコと、そしてスガタなのだろう。もしケイトが巫女であることを彼らが知れば、どうなるだろう?
 ワコは当然のようにケイトに寄り添い、ケイトの助けとなるよう動いてくれるだろう。そしてスガタは、そんな彼女をサポートするように、ケイトの助けとなってくれるはずだ。そう、あくまでも、ワコのついでとして、あるいはワコに危害を加えるものが狙ってくる対象として、自分を助けてくれるだろう。

 ケイトは特別にはなれない。特別を避けて目指したはずの科学だったが、その科学も特別を持っていた。それは、科学では説明できないこと、という特別だ。
 科学がその論理を破綻させないのは、体系内に定義されたものだけなのだ。定義されないものは、分からないものとして放置し、いずれそれが体系内に取り込まれるときを待たなければならない。そしてそういうことができるのは、特別な人間だけなのだろう。

 どの世界に行っても特別が重視される。普通では、表面的には何もないように暮らしていられても、やはり何かを満たされないまま過ごさなくてはならない。
 それに気づかないで生きていける人間は良い。それもひとつの幸せの形だ。しかし、気づいてしまった人間はどうすれば良いのだろう?そのまま絶望に朽ちていけば良いのか、あるいは特別になる努力をするべきなのか?だが、特別になれる保証なんてどこにある?

 もはやケイトにとって、ケイトが知る科学はケイトに幸せをもたらしてくれるものではなくなった。ケイトの知る科学は、この南十字島を箱庭として閉じさせている力の根源を知ることができない。
 そう、だからケイトが特別になるためには、この箱庭を作り出した理論を知らなければならないのだ。

 ひとまず今日は学校を休もう。今日学校に行けばヤマナミから呼び出され、全国理科展の内定を告げられるだろう。それを辞退することは決まっている。しかし、何かもっともらしい理由をつけなければ、それを学校の栄誉と考える彼らは納得しないだろう。その理由を考える時間もほしい。

 そんなことを考えながらたどり着いた、高台にある海の見える公園のベンチに、一人の若者が座っているのをケイトはみた。彼の前にはイーゼルがおかれており、そこには描きかけのポートレートのキャンバスが置かれていた。
 興味を引かれるものがあり、ケイトがその若者に近づいていくと、彼はケイトの方を見やって言った。
「やあ、はじめまして、しがらみちゃん。とりあえずこっちに座ってみないかい?」
 そんな怪しい誘い文句だったが、ケイトは座ってみることにして、一歩を踏み出した。

<了>





第1話 そして物語は始まる

第2話 夢、絶望、それでも信じられるもの

第3話 目覚める刃

第5話 離陸前夜につづく>

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