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第1話 確信 ~ はじめての東京 STAR DRIVER 輝きのタクト Following Stories

STAR DRIVER 輝きのタクト 二次創作

 以下の作品は、「STAR DRIVER 輝きのタクト」の二次創作作品です。公式作品とは一切関係ございませんので、その点をご承知置きの上、お読みいただければ幸いです。



STAR DRIVER 輝きのタク Following Stories 第1話 確信 ~ はじめての東京



「いきなりだけど、東京に行かない?」
 アゲマキ・ワコがこんな風に話を切り出したのは、食堂イーターの席上だった。いまは3人で6人掛けのボックス席を使わせてもらっている。
 そして話しかけた相手は、彼女の向かい側に座る二人の男の子、シンドウ・スガタとツナシ・タクトだ。

「ホント、突然だねえ。どうしたの、ワコ?」
 そう応えたのはタクトだ。スガタは沈思黙考タイプであるため、こういった場合に反応してくれないことも多いが、タクトは有言即実行が信条みたいなものなので、すぐに反応してくれる。

「それがね、このあいだ初めて、雑誌の懸賞というものに応募してみたの。そうしたら、旅行券が当たっちゃって。なんと、10万円分!」
「ワォ。イッツ・ア・ミラクル!ワコは運が良い人なんだね」
「というか、これまで運を溜めていたからじゃないかな?そういうの出したことなかったし…」

 これまでワコは、皆水の巫女として南十字島から出ることはできなかった。だから、旅行券が当たる懸賞に応募したところで、何の意味もなかったのだ。
 それが、先日の戦いの結果ゼロ時間の封印は破られ、ワコも島から出られるようになった。ワコの言葉には、そんな思いが込められている。
 スガタは、そんなワコの思いを汲んで、話題をつないだ。
「それで、どうして東京なんだ?東京に行きたいところでもあるのか?」
「うん、他の場所も考えたんだけれど、10万円で3人分だと、あんまり遠くへは行けないんだよね。そうするとやっぱり東京かなって。それに、わたしたちもいずれ大学に行ったりするわけじゃない?だから一度は東京の大学を見ておいても良いと思うんだよね~」

「お金の問題なら僕が何とかしてもいい。自分の分は自分で出しても良いし、タクトには貸しても良い」
「うううん、これはわたしから二人へのお礼も兼ねているの。だから、お金はわたしに出させて欲しい。どうせ懸賞で当たったものだし、気兼ねしてもらう理由はないから」
「そう言ってもらえると、助かるなあ。ボクはギリギリ生活していくのが精一杯で、旅行にお金を出すのはキビシイし。なんか格好悪いけど…」
「そんなことない!わたしが誘ったんだから、わたしに出させて。いまわたしにできるお礼はこれくらいしかないから」
 スガタとタクトからの相次ぐ言葉にそう答えたワコは、何か心に引け目を感じているような、曖昧な笑みを浮かべている。

「じゃあ、遠慮なく、おごってもらうことにしようかな」
「僕も、ワコに甘えるとしよう」
 少し深刻さを感じさせる空気を軽くするように、タクトとスガタが口々に言った。

「…。まかせなさい!わたしって太っ腹!」
「ところで太っ腹って言うのは、こういう意味じゃないよね…?」
 そう言ってタクトが指差した先のテーブルには、ワコによってすっかり食べつくされ、きれいになった料理の大皿が4枚並んでいる。

「タ・ク・トく~ん!!」

 そこにはもう、普段通りの仲良し3人組しかいなかった。



 春休み初日、タクトは南十字フェリー乗り場へと来ていた。ワコやスガタとの待ち合わせのためだ。

 今回の旅行の日程は完全にワコが仕切っていて、タクトもスガタもその全容を知らされていない。ただ、集合日時と場所、2泊分の着替えを持って来ることだけを知らせれていた。
 スガタはいつも誰かにやってもらうことに慣れているからか何も感じていない様だが、基本的に全て自分で決めて行動するタクトにとって何も知らされない状況は、どこか落ち着かなさを感じさせていた。戦いでは考えずに行動することが多いタクトにしては、意外な一面だ。

 そうこうしているうちに、スガタとワコがそろってフェリー乗り場へやってきた。スガタ付きのメイド、ヤマスガタ・ジャガーとスガタメ・タイガーも一緒だ。
「待たせたな、タクト」
「ごめんね、タクトくん。待った?」
「いや、ボクもさっき来たところだよ。ジャガーとタイガーはスガタの見送り?」
 タクトは、旅行に行かないはずの二人にたずねた。

「はい、スガタ坊ちゃまの旅立ちの日ですから」
「わたしたちも荷物持ちとして、お見送りにまいりました」
 ジャガーとタイガーが口々に答える。
 もしスガタの第一フェーズが失われる前ならば、彼女たちはスガタを害してでも、彼が島から出ることを阻止しなければならなかったはずだ。そんな悲劇が起こらなくて良かったと、タクトはあらためて思う。

「見送りはいらないと言ったんだがな。どうしても来ると言って聞かないんだ」
「せっかく見送りに来てくれるって言うんだから、感謝した方がいいよ。それにわたし、一回アレをやってみたかったんだよね。展望デッキと船着き場で紙テープを投げるヤツ!」
 ワコはそう言うと、バッグから紙テープのロールを7本取り出して見せた。虹色の7色になっている。

「ワコはなんかそういうの、好きそうだよね」
「でも、タクトくんもやってみたくない?それとももうやったことある?例えば、ハナさんと!」
 ワコが口にしたのは、タクトの中学時代の友人、オカダ・ハナのことだ。彼女とワコは、夜間飛行の公演で顔を合わせている。
「ハナはそんなことしないよ。そもそも、見送りに来てもらわなかったしね」
「そーなんだ、ふ~ん。じゃあ、なに、前日に涙の別れを繰り広げちゃったりした?タクトくん~、ハナ~、とか言っちゃったりして」
 そう言いながら、ワコは両手をガバっと広げると、誰かを抱きしめてキスをするような仕草を見せた。

「もー、ボクとハナは、そんな関係じゃないって!この前も言ったでしょ!はい!もうこの話はおしまい!それより!これからの予定はどうなってるの?出来れば教えてほしいんだけど」
 タクトはそうして話の流れを断ち切ると、知りたかったことをワコにたずねた。ワコは、もう少し追求したいような、そろそろ引き時かなと迷う様な、笑いと苦悩を混ぜたような表情を見せた後、バックから一冊の冊子を取り出した。若草色の画用紙で作られた表紙には、たびのしおり、と書かれている。

「じゃ~ん。これが今回の旅の栞です。もう、ばっちり計画をしておいたから、ホワイト・スター・ラインの豪華客船に乗ったつもりで、ば~んとわたしにまかせちゃってください!」
「…それ、タイタニック号じゃないよね?」
 タクトのツッコミにも、ワコは動じる様子を見せない。
「ま、ま、ま、それよりもうすぐ出航の時間だよ。フェリーに乗って、準備しないと。ジャガー、タイガー、デッキに上ったら紙テープを投げるから、上手く受け取ってね!」
「かしこまりました、ワコさま」
「おまかせください」
 ジャガーとタイガーがかしこまって答えるのを確認して、ワコは荷物を持ってフェリー乗船口へと走って行った。

「タクト、僕たちも行くぞ。ジャガー、タイガー、留守を頼む」
「いってらっしゃいませ、スガタ坊ちゃま」
「おかえりをお待ち申し上げております」
 スガタもそう言うと、ワコの後を追って行ってしまった。

「のっけからこれか、先が思いやられるなあ~」
「がんばって、タクトくん」
「お二人をお願いしますね」
 ジャガーとタイガーの励ましの言葉を受けながら、タクトもトボトボと乗船口へと向かって行った。



 七色の紙テープを波間に漂わせながら、3人を乗せたフェリーは東京へ向かって出航した。キャビンに荷物を置いた3人は、後部展望デッキで離れていく南十字島を眺めている。南洋の風が3人の頬をくすぐった。
「ホントに東京へ向かっているんだね…」
 ワコが感慨深く言う。
「わたし、前にミズノちゃんに聞いたんだよね。まだゼロ時間の封印が破られる前、ミズノちゃんが島を出ようとした時に起こったことを」
 わずかの沈黙ののち、タクトが言った。
「…どうなったの?」
 ワコは島を見ていた目をタクトに向けると、ほんの少しさびしそうな顔をして言った。
「フェリーに乗って途中まで来ると、夢から覚めたように、その日の朝のベッドの上に戻っているんだって。夢オチにしてもひどすぎると思わない?ちょっと作者に文句を言いたいレベルだよね」
「…そっか。これまで巫女はずっとそうやって閉じ込められてきたんだね」
 タクトは慈しむような目でワコを見て言うと、その視線を島へ転じた。

「でも、もうそんなことはないんだよね。タクトくんとスガタくんのおかげで、巫女はもう役割を失った。これからはいつでも島の外に出られるんだ。こんな風にね!」
 ワコはそう言いながら、デッキの手すりから離れてデッキ中央の方へ飛び出し、くるりと一回転してスガタとタクトの方を向いた。そして言う。
「ねえ、中に入って、トランプでもやらない?まだまだ旅は続くんだし!」
「ああ、そうだな。春とはいえ、外の風は少し冷えるからな」
「もう、スガタくん。なんかおじいさんみたいだよ、そのセリフ」
「ハハ、たしかに。スガタは落ち着いて見えるからね」
 ワコの軽口にタクトも乗った。
「…トランプでいまの軽口を後悔するなよ」

 こうして船の旅は続く。



 翌朝、3人の乗ったフェリーは、東京湾竹芝桟橋へと到着した。

「それで、これからどこへ行くんだ?」
 荷物を船からおろしながら、スガタがワコにたずねた。
「まずは、荷物をホテルに預けてきちゃわない?…ということで、ツアーの皆さんはこちらへつづいてくださ~い」
 ワコはそう言うと、例の旅の栞を高く掲げて、ふたりを誘導し始めた。
「…とりあえずついて行くか」
「…そうだね」

 そうして向かった先は、臨海高速鉄道ゆりかもめの竹芝駅。そこで切符を購入し、目的地へと向かうのだ。ここで意外な活躍を見せたのがタクトだった。

「わ~、これが自動改札か~。ここにsuicaをタッチするんだよね」
「そうらしいな。一回試してみたいが…」
 ワコとスガタは島を出るのが初めて。つまりは電車に乗るのも初めてだ。物珍しそうに自動改札の前であちこち見ている二人は、ちょっとした通行の邪魔になりはじめている。
「お~い、ふたりとも。そんなところで遊んでないで、こっちへ来て切符を買って!他の人の邪魔になっているよ」
 タクトはそんなおのぼりさんを引率する先生のようだ。

 タクトに言われ、心残りがある表情を見せながら切符売場へとやってきたワコたちは、促されるままに切符を購入しようとする。
「それで、どこまで行くの?」
 タクトがワコに聞く。
「えーっとね、有明まで」
「有明?ホテルって、そんなところにあるの?なんでまた?」
「うん、まあいいから、いいから。それで、いくらかな?」
「…まあ、いいか。有明まで370円だよ」
 若干腑に落ちない気分を感じながらも、料金案内板を見てタクトが答える。
「ありがと。よし、それでは切符を買って、出発!」


「うわ~あ、見事に何もないところだね…」
 有明駅へ降り立ち、外へ出たタクトの感想だ。
「ワコ、どうしてここを選んだんだ」
 スガタもさすがに不思議に思い、ワコにたずねる。

「ふたりとも、どこを見ているのかな?何もない?そんなことないじゃない。ほら、あれを見て!」
 そう言ってワコが指差した先には、ピラミッドを上下逆さにしたような建物があった。
「そう、あれが聖地・東京ビッグサイトです!」
「聖地?」
「東京ビッグサイト?」
 戸惑ったような二人の様子にも気付かず、ワコは興奮した様子でまくし立てる。
「そう、あの場所で、わたしがわざわざネットでお取り寄せしたあの本やその本なんかが、売られていたんだよ。つ・ま・り!あの場所に、あのお話やそのお話の作者さまがいらっしゃっていたということじゃない?あ~、もうそれを考えただけでもう…」
 ワコは、感無量という様子で身もだえしている。それを横目に見ながら、タクトはスガタと視線を交わすと、ガックリと来た様子で言った。
「ボクたち、なんであんな子が好きなんだっけ?」
「さあ?僕にも分からないな」



「じゃあ、気を取り直して、次の目的地に出発です!」
 ワコも興奮からようやく冷めやり、ホテルに荷物を置かせてもらって、再び3人は観光へと出かけた。次にやって来たのは田町駅だ。
「それで、ここからはどこへ行くんだ?」
「私立の名門、KO大学です」

 田町駅から北西の方角へ向かうと、三田通りへと出る。KO大学はこの三田通りに面しているのだが、三田通りからちょうど北の方角にそびえ立っているのが、東京タワーだ。
「わ~、東京タワーだよ。ね、ほら、ふたりとも、見て見て!」
 ワコが真前にそびえる東京タワーに驚いている。
「結構近いな。それによく見える」
「ね、そうだよね。KO大学に通えば、毎日東京タワーを見放題だよ!」
 初めて東京タワーをその目にするワコは興奮気味だ。スガタも冷静なように見えて、かなり興奮しているようだ。

 タクトは、そんな二人を生温かい目で見守る通行人たちの視線に冷や汗をかき、ふたりをなだめにかかった。
「ワコ、スガタ、時間があったら近くに見に行こう。でも、ここではしゃいでいると危ないから、早く大学の中に入らない?」
 タクトにそう言われ、スガタは我に返ったようだ。
「…む、そうだな。ワコ、行くぞ」
「え~、もう少し見ていたいな~」
 そう言いながらもワコは、スガタについて前に歩いて行った。
「…ふう、なんかボクだけ損をしていない?」
 タクトのそんなつぶやきには、哀愁すら感じられた。


「そろそろお腹もすいたと思うので、次はご飯を食べに行きま~す」
 ワコの先導で連れて来られたのは、ラーメン屋のように見えるお店。黄地の看板に書かれている文字は「ラーメン二郎三田本店」と読めた。まだ昼時にはかなり早い時間だというのに、幾人かの行列ができている。
「ほら、ふたりとも、ならんでならんで!」
 異様な光景に戸惑うスガタとタクトを促し、ワコは率先して行列の最後尾に並ぶ。それから30分後、ようやく入店した3人は、入り口で食券を購入するところまで来た。しかし、タクトとスガタは何を選べばよいか分からない。結局ワコに習って「ぶた入り大」を購入することにした。
 この選択が悲劇の幕開けである。彼らはまだ、ワコという人間を理解しきれていなかったのだ。

 3人並んでカウンターに座り、先ほど購入した食券をワコに習ってカウンターの上に置く。しばらくすると店員がスガタの前に来て言った。
「ニンニクは?」
「……?」
 戸惑うスガタを見て、ワコが口をはさんでくる。
「もう、スガタくん。ボーっとしてちゃダメだよ。店員さん、ヤサイマシマシカラカラニンニクアリ、この3人みんな一緒で!」
「はい」
 ワコが唱えた呪文のようなものを疑問にも思わず、店員が食券を回収して去っていく。
「いまの呪文は何だったんだ?」
「さあ?ボクに聞かれても…」
 スガタとタクトの戸惑いは増すばかりだ。

 やがて、3人の前に注文した商品が届けられた。ドン、という感じでカウンターに置かれたのは、山としか言いようのないものだった。
 それはおそらくラーメンなのだろうが、麺はまったく見えない。表面から見えるのは、山の様に盛られたキャベツやモヤシ、そしてその山に寄り添うように盛られた煮豚のかたまりだ。
「…なんだこれは?」
「…ボクに聞かれても」
 絶句する二人を尻目に、ワコはその山をカウンターから下ろすと、いただきます、と元気に言って、猛然と食べはじめた。あっという間に野菜の山を半減させ、その下からすごく太い麺を掘り出してくる。やはりラーメンらしい。それから冷ます暇もなく、その麺はワコの口の中に消えていく。
「ボクたちも食べよう…」
「ああ、そうだな…」
 そう言いながら丼をカウンターから下ろす二人は、さながら死地に向かう兵士のようにも見えた。



「…次はどこへ行くの?」
 何とかギリギリで完食し生還を果たしたタクトは、次の目的地をワコにたずねた。正直いえば、少し休みたい気持ちでいっぱいだ。
「次は、渋谷に行きま~す!」
 ワコはまだまだ元気いっぱいのようだ。いやむしろ、朝より元気になっている気がする。肌も心なしかテカテカしていないか。
「次は女子高生っぽい目的地だね」
 タクトは同じ様に疲れ果てているスガタに話しかけた。
「ああ、これでしばらく休めそうだ」


「なぜボクたちはこんな場所にいるんだ?」
 スガタは、宇宙人にアブダクションされた気分を味わっていた。なぜ自分がここにいるのか、全く分からない。
「…ボクに聞かれても」
 そう言うタクトも同じ気分だった。

 確かに彼らは渋谷に来ていた。しかし、女子高生たちが集まる方向とは真逆、駅の南側に来ている。彼らはある中華料理屋のテーブル席に座っていた。この店の名前は「仙台や」という。


「ワコ、なぜまた食堂に来ているんだ?」
 疑問はその原因にたずねなければ解き明かされない。スガタは思い切ってワコにたずねてみた。
「え?だってさっきのは朝ごはんでしょ?今度は昼ご飯だよ?」
「本気?」
 そう言うタクトは、正気?と聞きたかったに違いない。
「うん。…すみません、からあげ定食下さい。タクトくんたちは何にする?」
「…ウーロン茶ください」
「…僕も同じものを」

 しばらくしてワコの元にやって来たのは、鉢といった方がよい大きさの皿の上に、どっさりともられた千切りキャベツと、それ以上に大盛りな唐揚げの山。しかもその唐揚げは、ひとつが異常に大きい。その脇には、マヨネーズとマスタード、そしてなぜかケチャップもどっさり添えられている。見ただけでお腹がいっぱいになりそうだ。
「いっただっきま~す!」
 しかしワコは一切ひるみを見せない。先ほど二郎で食べたとは信じられない様なペースで、ぱくぱくと食べ進めていく。テーブルには取り放題のぬか漬けも置かれており、そちらを食べることも彼女は忘れない。油っこくなった口の中をさっぱりさせているのだろう。
 タクトとスガタはウーロン茶をちびちびと飲みながら、その姿をただ茫然と見ていることしかできなかった。



「…次はどこだ?」
「次は、お待ちかね。エリートの集まる大学、TKY大学です!」


「あれがYSD講堂か!」
 TKY大学本郷キャンパスに入り、たどり着いた講堂を見上げて、スガタは感慨深げにつぶやいた。

「タクト、知っているか?あのYSD講堂には、全学共闘会議に属する若手教員・学生たちが立てこもり、権力との闘争を行ったんだ。1969年1月19日、警視庁機動隊の突入により、それは解散させられてしまったが、彼らの志までは折ることはできなかった。もちろん、その後、内ゲバ事件や浅間山荘事件などで無用な犠牲が出たことは愚かしい限りではあったが、あの頃の学生の情熱を否定することはできない。そうは思わないか、タクト!」
「…ウン、ソウダネ。スガタ、詳しいんだね…」
「いや、知っていることを知っているだけだ」
 そう言って講堂を見上げているスガタは、まるで宝物を手に入れた少年の様だ。

「ねえ、スガタくん、タクトくん、疲れたからちょっとお茶しない?」
 話の途切れたタイミングを見計らって、少し離れた場所からワコが話しかけて来た。懸命にもスガタから距離をとって傍観していたらしい。
「…うん、それじゃ行こうか」
 釈然としない気持ちを抱えながらも、タクトはそう答えた。最初の予感通り、今日はタクトにとって受難の日なのだろう。


「ワコ、そういえばどうして今日はお台場とか、東京ドームとかには行かなかったの?どちらも近くにあったのに」
 予想通り、ハヤシライスとスパニッシュオムレツ(共に大盛り)を平らげ、食後のフルーツパフェ(やはり大盛り)に取り掛かっているワコに、タクトはたずねた。タクトとスガタの前にあるのは、まだ微かに湯気が立っているコーヒーのみだ。
「え、どういうこと?」
「いや、だってワコはアイドルになるのが夢なんでしょ?だから、アイドルの聖地に行きたがるのが自然かなって。それなのに、今日は大学か食べるところしか出かけてないじゃない?なぜかな~と思ってさ」

 そこでワコは、フルーツパフェにスプーンを突きさす手を止めてスプーンを置くと、両手を膝の上に戻し、姿勢を糺して話し始めた。視線はわずかにうつむいている。

「…わたし、本当にアイドルになるのが夢だったんだ。でも、ずっと叶わない夢だと思っていた。だってわたしは、南十字島の外には出られないから。…でも、タクトくんとスガタくんのおかげで、わたしも島の外に出られるようになった。だから今回の旅は、それが本当かを確かめる意味もあったんだ」
「だけど、やっぱりもしかしたら、それは嘘なんじゃないかって、心のどこかで不安にも思っていた。だって巫女たちはずっと、あの島に閉じ込められて暮らしてきたんだよ。それがわたしの代で急になくなるなんて、やっぱり都合がよすぎるんじゃないかなって。だから、もしこれが嘘でしたってことになったとしても、あんまり傷つかなくて済む場所を選んじゃったんだと思う」

「だって、大学も、食べる場所も、南十字島にだってあるでしょ?だから、もし行けなくなったとしても、そんなに落ち込まなくても済む。でも、テレビ局もドームも、島にはないんだよ?もし行けるって喜んでいるところに、やっぱりダメだって言われたら、たぶん立ち直れないんじゃないかと思うんだよね、わたし。だってアイドルになるのは、本当に本気の夢だったから。それが叶わないっていう絶望は一度で十分。二度も味わいたくないよ…」
 ぽつぽつと、しかし真摯に話し続けるワコに、タクトは言葉を失ってしまう。
「ワコ…」

「でも!今回東京へ来て見て、わたしは本当に島から出られるんだって分かった。わたしも夢を見て良いんだって。それは本当にうれしいことで。ありがたくて。涙が出そうなほどで。だからいまは、タクトくんとスガタくんに、感謝の気持ちでいっぱいです」
 そう言って顔を上げたワコは、その瞳には僅かに涙の跡をにじませながらも、満面の笑みをたたえていた。そしてそれだけで、タクトやスガタには十分だった。

<了>




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