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第12話 物語のゼロ時間 STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days

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STAR DRIVER 輝きのタクト 二次創作

 以下の作品は、「STAR DRIVER 輝きのタクト」の二次創作作品です。公式作品とは一切関係ございませんので、その点をご承知置きの上、お読みいただければ幸いです。

STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days 第12話 物語のゼロ時間



 ベッドの脇にある窓から月明かりが差し込み、絵本に目を落とす母を照らし出す。母はぼくの眠るベッドの脇に椅子を置き、やさしい声で物語を聞かせてくれた。
 その声にじっと耳を澄ませていると、いつの間にか夢の世界にいざなわれ、気がつくと朝になっている。それは、ぼくの人生で最も幸せな時間だったと、いまになって分かる。


『むかしヨーロッパでは、病気や飢餓などの悪い出来事は、魔女の仕業だと信じられていました。善き人々の祈りを魔女が妨げるために、自分たちが苦しめられていると信じていたのです』


「むかしの人はバカだったの?」
「そうではないのよ。いまとむかしでは、生きている人々の常識が違っているの。当時はそれが当たり前の世界だったのよ。本当に頭が良い人は、相手の立場になって考えられる人なの。だからあなたもそういう人になってね、トキオ」
 そうしてぼくをいさめる母の言葉も、いまはただ懐かしい。


『善き人々は平和な日常を取り戻すため、みなを呪う魔女を探し始めました。魔女狩りです。しかし、人々は誰が魔女か分かりません。魔女は普通の人間のふりをして暮らしているからです。』

『魔女を捕まえる異端審問官たちは、ちょっと変わった人を魔女と見破り、どんどん捕まえて行きました。もちろん彼らは、本物の魔女ではありません。しかし、拷問で魔女だと自白させられ、処刑されていきました。こうして、ヨーロッパに魔女狩りの嵐が吹き荒れたのです』


「どうして魔女じゃないのに、魔女として捕まっちゃうんだろう?」
 ぼくは無邪気に母にたずねる。
「人間はね、自分とは違うものに恐怖を感じる弱い生き物なの。だから、自分たちでは理解できない人々を、魔女だと決めつけることで、自分の理解できるものにしようとしたのね」
「ふ~ん、よくわかんないや」
「そうね、まだトキオには難しいかもしれないわね」


『ミハエルは、どこの街にもいる、ふつうの少年でした。しかし、魔女狩りの嵐はそんな少年の家族を襲います。職人仲間のまとめ役でもあったミハエルの父は、それを妬む仲間の密告で魔女裁判にかけられ、ミハエルの母親と共に、処刑されてしまったのです』

『魔女狩りの嵐が過ぎ去ったあと、ミハエルの家に残されたのは、ミハエルただ一人でした。わずかにいる親戚は、魔女の呪いを恐れてミハエルを引き取ろうとはしません。ミハエルは一人で生きていくしかありませんでした』

『ミハエルは他人の嫌がる仕事をすすんで引き受け、一生懸命に働きます。しかしミハエルはまだ子ども。出来る仕事には限りはあります。どんなに一生懸命働いても、おなか一杯にご飯を食べることすらできません』

『そんなある日の夜。明日の朝も早起きしなければならないミハエルが、空腹を堪えて眠りにつこうとしたとき、玄関の扉がそっとノックされるのに気付きました。こんな時間に誰だろう。ミハエルがそう思いながら玄関の扉を開けると、外には誰もいません。いたずらでしょうか?いいえ、そうではありませんでした。玄関先には、一片のパンと、あたたかいスープの椀が置かれていたのです』

『お腹が空いているミハエルは、疑問に思う暇もなく、お腹の命じるままにぺろりと平らげてしまいました。そして、久しぶりに満腹になった心地よさを感じながら、ぐっすりと眠りにつきました』

『次の日も、そのまた次の日も、同じ様に一片のパンとあたたかいスープが置かれ続けました。さすがにミハエルも、誰が置いているのか不思議に思い始めます。ある晩、ミハエルは、誰が食べ物を置きに来るのか、玄関脇の格子窓からそっと様子をうかがい、確かめることにしました』

『そのうちにやって来たのは、3件隣に住む老人でした。かれは、持ってきたパンとスープの椀をそっと玄関先に置くと、すぐに自分の家へと帰っていきました。ミハエルには意外でした。ミハエルに会うたびに、杖で追い払ってくる老人が、ミハエルに食べ物を恵んでくれていたのですから。ミハエルは、老人に深く感謝をしました』

『それから三十年の月日が経ちました。ミハエルは立派に成長し、街で有数のお金持ちになりました。むかしはミハエルを魔女の子と蔑んだ人々も、いまではミハエルにおべっかを使ってきます。それがミハエルには不思議でした』

『そんなある日、ミハエルの住む街を、ふたたび飢饉が襲います。ミハエルは私財を投げ打って、炊き出しを続けました。そのおかげで、ミハエルの住む街からは一人の餓死者も出ませんでした。しかしミハエルは、また一文無しに戻ってしまったのです』

『一文無しになったミハエルは、住む家もなくして乞食になりました。そのうち、寒い冬がやってきます。しかしミハエルには、防寒具もなければ食べるものもありません。ある寒い晩に、ミハエルは飢えと寒さに震え、死んでしまいました。しかし、路上で野たれ死んだミハエルの顔は、どこか満足げでした』


「ミハエルはみんなのために尽くしたのに、どうして死んでしまったの?どうして街の人を怨まなかったの?」
 物語の結末に納得がいかなかったぼくは、母に尋ねた。母はそんなぼくの頭をやさしく何回かなでると、その顔にひっそりとした笑みをたたえて言った。
「トキオ、あなたはやさしい子ね。でもミハエルは、きっと自分と同じ様な境遇の子どもを作らずに済んで、満足していたのだと思うわ。その報いが何もなかったのだとしてもね」
「どうして?誰にも褒められないのに良いことをするなんて、意味がないよ」
「いまはそう思うかもしれない。でも、大きくなれば、トキオもきっとミハエルの気持ちが分かるようになるわ。だってあなたは、お父さんの子なのだから」
 そういう母の顔はなぜか、それまでで一番やさしい顔の気がした。

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「…トキオ、何をしている!早く道場へ降りて来い!」
 やさしい夢の残滓にひたっていたツナシ・トキオの目覚めの気分は最悪だった。彼を夢の園から引き戻したのは、父、ツナシ・イクロウの声だ。
 か弱きものを守れという家訓の下、トキオには日々の鍛錬が課せられている。今日もその時間だ。

 力を伴わない正義は戯言に過ぎない。だが、正義の下に振るわれる力は最も人を傷つける。ゆえにツナシの一族は、厳しい鍛錬により技を磨き続けながら、決して体制には属さず、むしろ体制によって虐げられる人々のためにのみ、その力を揮ってきたのだ。


「もっと真剣に立ち合わんか!そんなざまではツナシ家を継がせることはできんぞ!」
 二十畳ほどの板張りの道場に、イクロウの檄が飛ぶ。イクロウの苛烈な攻めをいなし切ることができず、トキオは道場の壁に叩きつけられた。
 その勢いで前のめりに床へと倒れ込んだトキオは、左手にある木刀を両手でつかみ、杖の様にして体を支えて膝立ちになった。そしてもう一刀を拾い上げ、立ちあがって木刀を構える。

 左の刀は正眼からやや斜めに柄を引き、右の刀は中段からやや下段に下ろして剣先を引く。そして、すり足でにじり寄るようにして、トキオはイクロウとの間合いを詰めて行った。イクロウは、両手で正眼に構え、ピクリともしない。
 トキオがイクロウの間合いに足を踏み入れた瞬間、トキオは飛ぶようにしてイクロウとの間合いを詰めて斬りかかった。振りかぶった左刀から打ち下ろされる初太刀、それを引いて、床すれすれから切り上げる二の太刀、引いていた左からひねり使ってを繰り出される突きまでを一連の流れとする技だ。特に二手を使って作りだした隙を突く三の太刀が受けづらく、必殺の一撃となりやすいのが特徴だ。
 しかしイクロウは、逆に間合いを詰め返すことで二手の威力を無効化し、その流れでトキオの鳩尾に柄頭の一撃を叩き込んで、トキオを悶絶させた。

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「かあさん、かあさん。起きて、ねえ、起きてよ!」
 病院の霊安室に寝かされている母の体にすがって、ぼくは叫んでいた。真っ白い蛍光灯の明かりと、枕頭にの2つの燭台で燈されているろうそくの明かりが、ぼくと母を照らしていた。真っ白いシーツで覆われた母の体は、その光を反射して、全てを白く覆い尽くすかのようだ。

「どうして、どうして起きてくれないの…」
 どうしてかはぼくにも理解できていた。ただ、それを受け入れたくなかったのだと思う。

 あのやさしい母は、突然死んでしまった。どこにでもある様な事故で、そのやさしさは永遠に失われた。
 道路に飛び出し車にひかれそうになった子どもを助け、代わりに自分が轢かれるという、ツナシ家の嫁としては誇れる死だったのだと親戚はいう。…でも、そんなものは、くそくらえだ。誇りなんかより、母が生きていてくれる方がずっと良い。

 たとえ誇りを守ったとしても、残されたぼくは誰が守ってくれるのだろう?そしてぼくの悲しみは、誰が拭い去ってくれるというのだろう?もうひとりの近しい肉親である父は、ぼくを守ってくれるどころか、この場所に来ることすらなかった。
 そんなさみしい別れの風景の中で、安らかな母の顔が不思議なものとしてぼくの記憶に焼きついた。


 その日から、ぼくはツナシの家が守ってきたものに何の価値も感じられなくなった。どれだけ鍛えた力も、母を守る役には立たなかった。大切な人も守れない力に何の意味があるのだろう?それなのに、見ず知らずの他人だけを助けられても嬉しくなんてない。
 それでもぼくが鍛錬を投げ出さなかったのは、その先に欲しいものが見えたからだ。

 ツナシ家の家長には、代々、シルシという、不思議な力を使える者の印が引き継がれる。その力は、常識では計り知れないことも実現させることができるという。その不思議な力に、ぼくは最後の希望を見出していた。どうしてもシルシが欲しい。

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 ザシャッ!
 突然、水を浴びせかけられたトキオは、その冷たさに目を覚ました。

「トキオよ、貴様の剣には邪な光がある。それは剣をただの暴力へと貶めるものだ。剣が暴力であることは真実だが、それを扱う人間が暴力であることは許されん」
 トキオに水を浴びせた本人であるイクロウが、左手にぶらりと木刀を下げたまま、トキオを見つめる。その視線は冷ややかだ。とても息子に向けるものとは思えない。

「オレの剣のどこに悪いというんだ!毎日、あんたの言う通り、鍛え続けて来たというのに!」
「それはその通りだ。しかし、お前は何のために剣を学ぶ?その目的が、お前自身を邪剣たらしめている根源なのだ。その邪を消し去ることができない限り、お前にツナシの家督を継がせることはない。シルシの継承もさせない」
 その言葉は、トキオにとって絶望的な宣告だった。あまりの怒りに我を忘れたトキオは、右手に持っていた木刀をイクロウに向かって投げつける。イクロウは飛んで来た木刀をわずかに首を傾けることでかわした。

「あんたはいつもそうだ。何でも分かっているみたいなことを言う。そして、自分勝手に生きて、それに振り回される家族のことは考えてもいない。あんたにとっては血のつながった家族よりも、見知らぬ他人の方が大事なんだろうよ」
「何のことだ?」
「おふくろのときだってそうだ。あんたは病院どころか、葬式にだって来なかった。オレたち家族は、あんたの守るか弱きものには入っていないんだろうよ!だから、オレたちよりも他を優先する。でも、おふくろだって、あんたにそばにいて欲しい時はあったはずだ。だがいつだってあんたはいない。必要な時そばにいることもできないなら、そんなのは家族じゃない。ツナシの家を継ぐなんて、こっちから願い下げだ!」

 トキオはそう言い放つと、足早に道場を去った。そして、二度とこの道場に戻ることはなかった。道場には、ひとりたたずむ父、イクロウの姿があった。

<了>





第1話 そして物語は始まる

第2話 夢、絶望、それでも信じられるもの

第3話 目覚める刃

第4話 解けるしがらみ、絡むしがらみ

第5話 離陸前夜

第6話 雪山のきずな

第7話 論理を拒む奇妙な闇

第8話 南南西に進路をとれ

第9話 新しい季節に

第10話 貴方のために流す涙

第11話 いつもあなたのそばにいる

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コメント
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いつも拝見してます

はじめまして。いつも楽しく拝見しています。
また時間を見つけて、遊びに来させて頂きますね!

2011-04-27 05:27 │ from ゆっきーURL Edit

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