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第10話 貴方のために流す涙 STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days

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STAR DRIVER 輝きのタクト 二次創作

 以下の作品は、「STAR DRIVER 輝きのタクト」の二次創作作品です。公式作品とは一切関係ございませんので、その点をご承知置きの上、お読みいただければ幸いです。

STAR DRIVER 輝きのタクト Early Days 第10話 貴方のために流す涙


-1-

 闇色に染まるうっそうとした森の中を、生ぬるい風が吹き抜ける。その風は、樹々の合間の開けた場所で油断なく構えるヤマスガタ・ジャガーとスガタメ・タイガーの頬をくすぐり、ひとしずくの汗を地面に落した。彼女たちは今、この森の中で、彼女たちを狙う敵と対峙していた。

 一歩、森の外へと足を踏み出して空を見上げれば、都会では決して見ることのできない満天の星空が広がっている。加えて今日は満月。夜道を歩くには十分な明るさが得られるだろう。
 しかし現在、彼女たちがいるのは木々の生い茂る森の中だ。木々の葉により月明かりは遮られ、彼女たちの下まで届かない。ゆえに、ジャガーには、もし振り返ったところで、背中合わせに立つタイガーの横顔すらはっきりとは見えないだろう。だからジャガーは振り返らない。ただ、触れた背中ごしに伝わってくるタイガーの心臓の鼓動と、緊張を感じさせる荒い呼吸音が、彼女が確かにそばにいることを感じさせてくれる。

 敵の目からは、自分たちはどのように見えているだろう。客観的な思考は、緊張に縛られる感情を冷静に引き戻し、戦いの場において本来の実力を発揮させてくれる。そんな考えが、ジャガーに自分たちの状況を振り返らせた。

 ジャガーとタイガーの身を包むのは、濃紺の忍び装束だ。いつもは頭につけているうさぎとトラの耳のカチューシャもつけてはいない。ゆえに、遠くからでは彼女たちの姿を捉えることも難しい。
 死角を補うように、背中合わせに立ち、油断なく構える彼女たち。いずれも刃引きの刀ながら、ジャガーは逆手に持った小太刀二刀を、タイガーは長さ二尺五寸の直刀、いわゆる忍刀を構えている。仮に気配を殺した敵が近づいて来たとしても、この開けた場所に姿を現した途端に、それぞれの武器が速やかに対応する。また、飛び道具で遠くから狙おうとすれば、周囲にある木々の幹がその行く手を遮り、彼女たちの身を守ってくれるだろう。

 こうして自分たちの置かれた状況を冷静に見つめ直し、ジャガーは自分たちの判断が正しいことを再確認した。これは万全の守りのはずだ。
 しかし、それすらも油断と言わなければならないのだろう。そう思った瞬間、ザザザッと盛大な音を立て、木々の葉を巻き込みながら、こぶし大の石が無数に彼女たちの下へと飛んで来た。

 その音で状況を瞬時に判断したジャガーとタイガーは、それぞれ前方向に飛び退り、木の幹を背にして周囲をうかがった。だが、追い打ちをかけるように、タイガーが飛び退った方向からビュンッという風切音がしたかと思うと、タイガーの悲鳴が聞こえて来た。
「きゃぁ!」
「タイガー!」

 思わず叫び、タイガーに駆け寄ろうとするジャガーだったが、突然、彼女の首筋にあてられた刃を見て、その動きをピタリと止めた。
「まだまだ修行が足りんな」
 その声のした方にゆっくりと振り向くと、そこにあったのは、油断なく刀を構える父、ヤマスガタ・ヒョウスケの姿だった。


 ジャガーは父と共に、罠にかかって逆さ吊りにされているタイガーを救助し、道場へ帰った。これで本日の実戦稽古は終了だ。道場の床に正座し、終了の許しを待つジャガーとタイガーに、ヒョウスケから本日の実戦稽古の講評が伝えられる。
「敵の奇襲から体勢を立て直し、次の襲撃に備えるまでの動きは、ジャガー、タイガー、共になかなか良かった。及第点だ」
「ありがとうございます」
 目線を切って謝意を表すジャガーとタイガーの言葉が重なる。

「しかし、そのあとがまずかったな。お前たちにとって守りやすい場所というのは、敵にとっては攻めにくい場所だ。だからこそ、たとえ姿が見えなくとも、その場所は読まれやすい。備える場所を読むことができるならば、それに合わせて罠を仕掛けることも容易だ。だからこそ、お前たちは俺一人にあしらわれてしまった」
 ヒョウスケはそういうと、ジャガーとタイガーを見据えた。その裂ぱくの気合は、こうして離れて座っていても、二人を押さえつけるような力がある。ジャガーは、その威圧を振り払うように、腹の底から声を絞り出して反駁した。
「最善の位置で迎え撃つことができないのだとしたら、どうすれば良かったのでしょうか?」

 ヒョウスケはそんな娘にひとつうなずきを返すと、ジャガーの問いに答えた。
「それは彼我の実力差と、周囲の状況による。もし俺とお前たちの実力差が小さければ、今回の対応でも十分に俺を退けられただろう。それは地の利が助けとなり、お前たちの総合力が俺の力を上回るからだ。しかしそうでないならば、安全だと思う場所で守るお前たちは、まとめて格好の的となってしまう」
「この場合、彼我の実力差を埋めるのは行動だ。お前たちは二人だ。ひとりひとりは俺に敵わないとしても、物理的に別の場所を同時に占められるというのは、それだけで強い力となる。その力をどう生かして勝利に結びつけるか、それはお前たちの創意工夫にかかっている。精進することだ」
 そう言い放つと、ヒョウスケは立ちあがり、道場から出て行ってしまった。
「ありがとうございました」
 道場に、立ち去ったヒョウスケに対する敬意の声が響き渡った。


「う~ん、今日もいいようにあしらわれちゃったな。一体いつになったら一矢報いることができるかな。ところでタイガーは吊り下げられた足、大丈夫だった?」
 軽くシャワーを浴び、寝巻に着替え終えたジャガーは、隣を歩くタイガーに尋ねた。
「はい、大丈夫です。坊ちゃまを守るための修業ですから、このくらい何でもありません」
「タイガーは一途だねぇ。でも、坊ちゃまにはワコさまという許嫁がいるんだから、入れ込みすぎると辛いだけだよ、いまさらだけどね」

「…でもわたしは、スガタメ、ですから。坊ちゃまのためにわたしの人生はあるのです」
「そう…」
 タイガーのスガタメ家にしろ、ジャガーのヤマスガタ家にしろ、シンドウ家に生まれるシルシの持ち主、スガタに仕えることには変わりはない。佐藤や加藤、遠藤などがかつて藤原氏の一族郎党であったように、それはその家名が示している。
 だがそのあり方は、両家で少しずつ異なっている。ヤマスガタが男寄り、武門の一族であるのに対し、スガタメは女寄り、側女を輩出してきた一族なのだ。すなわち、ヤマスガタの心映えが忠だとすると、スガタメのそれは愛なのである。

「まあとにかく、明日も忙しい、坊ちゃまに美味しい朝食を食べていただくためにも早く休みましょう!じゃあ、おやすみ!」
「おやすみなさい」
 そう言って、ジャガーとタイガーは、自分たちの部屋へと入って行った。

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-2-

「本日は奥義の伝承をおこなう」
 いつもと同じ様に道場へ入って来たヒョウスケは、道場の床に正座するジャガーとタイガーに、いつもとは違う言葉を発した。道場は月明かりに照らし出され、修業を積んだ者には十分すぎるほど明るい。

「奥義の伝承ですか?」
 ジャガーがヒョウスケに、オウム返しに尋ねる。
「そうだ。サイバディのドライバーの第一フェーズに対抗するための奥義だ」
 なるほどそれは納得がいく。今後、綺羅星十字団が表立って活動するようになれば、その魔手がシンドウ・スガタに及ぶこともあるだろう。その対策を考えておくことは重要だ。

「なるほど。して、どのような第一フェーズへの対策なのでしょうか?」
 ジャガーはタイガーと顔を見合わせた後、ヒョウスケに尋ねた。

「うむ。第一フェーズには様々な能力があると知られているが、所詮は能力者自身は普通の人間に過ぎない。人間の範囲を超えないのであれば、能力がどのようなものであれ、大した問題ではない。これまでの修業で叩き込んだ創意工夫を凝らせば、その障害は乗り越えられるだろう。今回伝承するのは、人間の矩を踰える第一フェーズに対抗するものなのだ」
 そういうと、ヒョウスケは少し間を置き、そしてまた話をつづけた。ジャガーとタイガーは、じっと座ってその話を聞いている。

「その第一フェーズは、とても強力だ。そのドライバーは自身のリビドーだけでなく、周囲の生き物が持つリビドーを奪い去り、それを収束させて標的に落として敵を一掃する。その一撃の威力は大きく、また、射程も広い。ゆえに、一足一刀の間合いに踏み込んで一太刀浴びせることも容易ではない。ゆえにこの奥義は、二人一組で繰り出す技となっている」
 ヒョウスケはそう言うと、ジャガーとタイガーを順に見据えた。
「つまり、わたしとタイガー、二人で繰り出す技ということですね」
 ジャガーがヒョウスケを見上げ、確認する。一方タイガーは微動だにせず、ヒョウスケをじっと見つめている。
「そういうことになる」

「二人一組といっても、具体的にはどのような技なのでしょうか?」
 ジャガーが話の続きを促した。
「先ほども言った通り、この第一フェーズの一撃を防ぐことは困難だ。ゆえにこの技を繰り出す二人には役割分担が課せられる。相手の一撃をあえて受ける役割と、その隙をついて相手に必殺の一撃を加える役割だ」
 そういうと、ヒョウスケは再びジャガーとタイガーを順に見た。
「つまり、ひとりの犠牲の上に敵を必ず倒す技ということですね。そうまでして倒さなければならない敵がいる、と」
「そうだ。この技を繰り出す必要があるときは、シンドウ家も含めて、我々が守ってきた平穏を決定的に乱す敵が現れたときなのだ。その敵は何としても屠らねばならん。その結果が我々に犠牲を強いるとしても、だ」
 ヒョウスケはそう言うと、道場では決して見せないはずの感情をほんの少しだけ浮かべ、沈痛な面持ちでジャガーとタイガーを見やった。ジャガーはそのまなざしを決然と見返す。一方タイガーは、その表情を消し去ったまま、じっと座っている。

「なぜそのような強敵に対するのがわたしたちなのでしょうか?一族にはもっと手練の者もいるかとおもいますが」
 ジャガーは、先ほどから一言も口を挟まないタイガーに代わって、ヒョウスケに疑問を呈する。
「もちろん、お前たちがやらなければならない理由はある。だが、その話は後で話そう。いまは、術理の話だ」
 ヒョウスケはジャガーの質問を軽くいなし、本題に戻した。いなされたジャガーは、ヒョウスケに向ける視線を強くする。月明かりに照らし出されたヒョウスケの表情に、先ほどの迷いはもう見えない。

「この第一フェーズはリビドーの一撃だ。そしてその一撃が攻め手に向かってしまっては、反撃の術を失くしてしまう。最初の一撃は、必ず受け手にあたらなければならない。ここで、相手の術理を利用する」
「リビドーの一撃は、リビドーの高い側から低い側に流れる。雷が電位の高低差により生じるように、水が高きから低きに流れるように、だ。相手のリビドーはとてつもなく強大であり、彼以外の者は必ず、彼のリビドーを超えない。ゆえに、この技は必ず標的にあたるのだ」
「逆に言えば、相手の一撃は低いリビドーの人間へと流れるとも言える。ゆえに、相手が一撃を放つ瞬間に受け手となる者は、攻め手となる者よりも低いリビドー、マイナスのリビドーを持てるように訓練を重ねるのだ。さすれば、相手の一撃はより低いリビドーの持ち主、受け手に落ちるだろう。このとき、ただリビドーを小さくするだけではなく、マイナスの位置にまで低めなければならない。ただリビドーが小さいだけでは、相手の狙いをそらすことはできないのだ。よってこれからは、お前たち二人の役割を分け、それぞれに適した修業を課すこととなる」
 ヒョウスケはそういうと、言葉を止めた。月明かりが満たす道場に沈黙が広がる。するとタイガーが、この日、初めて口を開いた。

「その第一フェーズの持ち主とは、スガタ坊ちゃまなのではありませんか?」

 その瞬間、道場の格子窓から強い風がビュウッと吹き込んできた。その風は、ジャガーの、そしてタイガーの髪を大きく揺らす。露わになったタイガーの顔には、何の表情も浮かんでいない。

 ヒョウスケは、ジャガーとタイガーにとって決定的な言葉を放った。
「その通りだ」

 その言葉を聞いた途端、タイガーは立ちあがり、ヒョウスケに詰め寄る。
「どうして!どうしてわたしたちが、坊ちゃまを傷つける技を学ばなければならないのですか!」
 タイガーの言葉の激しさとは裏腹に、その表情は泣き顔になっている。ジャガーはタイガーに駆け寄ると、ヒョウスケから彼女を引き離し抱きしめた。タイガーはジャガーの胸にすがりつき、泣き出す。

「タイガーの言うとおりです。なぜわたしたちが坊ちゃまを弑さなければならないのです?わたしたちは坊ちゃまを守るために、日々の試練に耐えているのです!」
 ジャガーは、自分の胸に顔をうずめるタイガーの髪をやさしくなでながら、強い口調でヒョウスケに言った。ヒョウスケはその様子をじっと見つめ、答える。

「より正確に言うならば、今のスガタさまを、というわけではない。自らの役割を逸脱されたスガタさまを、ということだ。我々の一族が守るのはシンドウ家だけではない。世の平穏だ。もしそれをスガタさま自らが乱す時がくれば、全ての感情を排してそれを糺す。それが我が一族の宿命である」
「しかしそれならば!なぜわたしたちなのです。坊ちゃまを親しくお世話し、共に過ごすわたしたちに坊ちゃまを害せよとは、あまりにもひどすぎます!」

「もちろんひどいことを強制しているのは分かっている。しかし、スガタさまに親しく接するお前たちだからこそ、スガタさまの心の隙をつける。ザメクドライバー暗殺の奥義の神髄は、ザメクドライバーとの心の距離を縮めることにある。お前たちはそのために、スガタさまの側に仕えているのだよ」
 ヒョウスケは、父親としての内心を全く表に出さない強い精神力を以って、冷たく娘に告げた。ジャガーにはとっさに返す言葉もない。
「今日はもう修業が出来る状態ではないだろう。だが決定に変更はない。今日はもう休み、心を整えてから明日以降の修業に臨め」
 ヒョウスケはそう言い残すと、道場から去って行った。その場には、茫然とたたずむ彼の娘、ジャガーと、その胸にすがりついて泣くタイガーが残された。


「どうしてわたしたちがこんな目にあわなければならないの…」
 ヒョウスケが去ってからどれほどの時が過ぎただろうか。ようやく涙を収めつつあるタイガーが、小さくつぶやいた。

 どうして。どうして!それはジャガーも問いたいことだ。だが問う前に、タイガーの涙を見て冷静さを取り戻したジャガーには、その答えが分かってしまう。それに、ヒョウスケの言葉にどうしようもない理があることも。
 この冷静な心は、長年の修業により培われたものだ。ゆえに本当はタイガーにも、その答えは理解できていることだろう。ただ理解したくないだけだ。もし許されるならば、ジャガーにも理解したくない答えには違いない。しかし、それは許されないのだ。

「タイガー、わたしたちには修業を拒むことはできないわ。でも、坊ちゃまがわたしたちの標的とならなくて済むよう、坊ちゃまと共にあることはできる。だからこれからも、今まで同様、誠心誠意、坊ちゃまにお仕えしましょう。坊ちゃまを手にかけるときが永遠に来ない様に…」
「そしてもしもそんな時が来てしまったのならば、…わたしが坊ちゃまを手にかけましょう。だからそのときは、あなたはわたしを恨みなさい」
 ジャガーはそう言うと、タイガーの黒髪をそっとひとなでした。それに反応して、タイガーがそっと顔をあげる。

「ジャガー…あなたも泣いているわ…」
 そうつぶやくタイガーの涙に濡れた顔は、哀しいほどに美しかった。
<了>



第1話 そして物語は始まる

第2話 夢、絶望、それでも信じられるもの

第3話 目覚める刃

第4話 解けるしがらみ、絡むしがらみ

第5話 離陸前夜

第6話 雪山のきずな

第7話 論理を拒む奇妙な闇

第8話 南南西に進路をとれ

第9話 新しい季節に

第11話 いつもあなたの側にいるにつづく>

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